模型実験の先駆者 松平 精 博士
 業績
 海軍技師時代、試験飛行中の零式戦闘機空中分解事故の原因が主翼のフラッターであることを模型実験により突き止めた。幾何学的相似のみを議論していた時代に、応力の相似にまで着目しダミーウエイトを用いて応力、重力の比を合わせると言う、当時としては驚くべき正確さで模型実験を行った。(「模型実験の理論と応用」3版 p5-7 ダミーウエイトについてはp63 参照)
 戦後は国鉄技術研究所において、車両の蛇行動による脱線事故は台車の自励振動であることを看破し、我が国高速鉄道の発展に多大な足跡を残した。蛇行動の研究にも模型が使用された。
 略歴
1910年1月生
1934年 東京大学船舶工学科卒
1934年 海軍航空技術敞飛行機部技師 主として飛行機振動の研究
1945年 国鉄鉄道技術研究所 主として車両振動の研究
1964年 同所所長
1969年 石川島播磨重工業株式会社常務 同社技術研究所長、宇宙開発事業部長、技術本部長歴任
1978年 同社顧問
1989年 日本機会学会名誉員
    財団法人 研友社会長
2000年 没 享年90歳
 主な著書、主要論文
・海軍空技敞実験報告、3106号、空技報01497、1941
・「基礎振動学」、共立出版、1950
・「基礎振動学 第四版復刻版」、現代工学社、1973
・「飛行機の振動」、ニッセイエブロ、1991
・「零戦から新幹線まで」 日本機械学会誌 6月号 p30-33、1974

「日本海軍における飛行機振動研究の回顧-1-フラッタ関係」、日本機械学会誌82(733)、日本機械学会、1979.12
「日本海軍における飛行機振動研究の回顧-2-動力装置による振動」、日本機械学会誌83(736)、日本機械学会、1980.03
 参考文献
・江守一郎・斎藤孝三・関本孝三、「第三版 模型実験の理論と応用」、技報堂出版、2000
・堀越二郎、奥宮、「零戦(日本海軍航空小史)」、日本出版協同、1951
・堀越二郎、奥宮、「零戦」(増補改訂)、日本出版協同、1954
・堀越二郎、「零戦」、初刊カッパブックス、光文社、1970、再刊講談社文庫、1984
・柳田邦男、「零式戦闘機」、文芸春秋、1977
・江守一郎、「機械のはなし」 技報堂出版 1986年
・江守一郎、「模型からの発想」-新技術に挑むスピリット- 講談社ブルーバックス 1985年

・NHKプロジェクトX製作班「プロジェクトX挑戦者たち2 復活への舞台裏」 p13-52 執念が生んだ新幹線 老友90歳・飛行機が姿を変えた NHK出版 2000